戦略実行4STEP

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ー戦略をたてて、それを実行する人を増やすー

戦略実行4STEP

published 2019.01.18 / update 2019.02.05

【対策2】全社横断的に適用できる戦略指標を1つ設定する | 「戦略実行4STEP」S(戦略策定)段階

【対策2】全社横断的に適用できる戦略指標を1つ設定する

戦略を本気で実行するための独自ワークフレーム「戦略実行4STEP」を説明いたします。
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戦略実行4STEP | 戦略を本気で実行するための独自フレームワーク

対策2:全社横断的に適用できる戦略指標を1つ設定する

(1)戦略指標設定の基本的考え方

戦略を策定しても、それを日常業務と結びつけなければ、実施はおぼつきません。この問題に対しては、戦略を遂行するとその値が改善されるような指標(以下では「戦略指標」と呼びます)を設定することが有効です。

ここで、戦略指標には、次のような性質が求められます。

  • 指標値を改善させようとするとおのずと戦略が実施されること
  • 各部門が共通で使えること
  • 計測しやすいこと

以下では、この性質を満たした指標の設定方法について考えてまいります。

そもそも、なぜ戦略を実行しようとしているのかというと、もっとも重要と言ってよい目的は、売上をあげることでしょう。では、売上を指標にすればよいかというと、答えはNoであることが多いと思います。

と言いますのも、社長が社員に対して「売上をあげろ」と指示する場合、社員にはいろいろな手段が考えつきます。

仮に、この会社の戦略が「モノづくりにこだわり、価格は高くとも高品質の製品を提供する」だった場合、戦略をしっかりと覚えている営業担当者であればきちんと高い品質を訴求するでしょうが、戦略を忘れてしまっている営業担当社員は目先の売上をあげるために大幅な値引きをするかもしれません。

その結果、利益が減少して高品質の製品を開発・提供するための資金がなくなり、戦略が実行されないことになってしまいます。

これは、戦略を忘れてしまった社員が悪い面もありますが、「売上をあげろ」という指示にも大きな問題があります。

つまり、「売上をあげろ」という「アバウト(おおざっぱ)」な指示では、戦略に沿わない行動を誘発する可能性が高いということです。

そこで、直接、売上を指標にはせずに、売上があがる構造を再考してみます。売上を継続的にあげるためには、自社の商品やサービスに満足していただくことが必要でしょう。

これによって、リピートしてもらったり口コミなどでほかの人にすすめてもらえる場合もあるでしょう。

お客さまに満足してもらう方法としては、「高品質の商品・サービスを提供する」、「低価格にする」、「即日配送する」などいろいろな方法が考えられますが、「うちの会社はこの方法で行こう」と決めた具体的な方針が戦略です。実際の時間軸に沿って整理しなおすと、

  • 戦略に従った行動をとる
  • 戦略的に提供する価値をお客さまに享受していただき満足していただく
  • リピートや口コミなどによって継続的な売上があがる

という流れになります。そして、価値を享受し満足していただいたお客さまが増えれば増えるほど、売上も向上することが期待されます。

(2)戦略指標の基本パターン

ここまでの検討を踏まえ、価値を享受してもらったお客さまの数を指標にするとよさそうなのですが、このままだと若干抽象的になってしまいますので、実際に指標として使うためには、一定の基準(以下、価値基準と呼ぶことにします)を設定し、それをクリアする価値を享受してもらったお客さまの数という形に整理したほうが便利です。

たとえば、資格学校を例にとると、「試験に合格する」ということを価値基準とし、その基準をクリアした方(合格した方)の数を指標とすることになります。投信会社の場合であれば、「5年間で資産を10%増やす」ということを価値基準とし、それ以上の運用成績をあげたお客さまの数を指標にすることができそうです。

戦略指標の基本パターン 
= 価値基準をクリアしていただいたお客さまの数
= お客さま総数 ×  価値基準をクリアしていただいたお客さまの割合(価値基準クリア率)

ここで、先に掲示した戦略指標に求められる性質が満たされているかを確認しましょう。

指標値を改善させようとするとおのずと戦略が実施されること

指標値を改善させるためには、戦略に基づいた価値をしっかりとお客さまに提供して満足していただく必要がありますので、自然に戦略が実施されることになります。上述の資格学校であれば、とにかくお客さまの合格をサポートすることになります。

各部門が共通で使えること

戦略指標の基本パターンを変形した式をみると、この指標は、「お客さま総数」という営業部門が主に追い求める数値と、「価値基準クリア率」という開発、生産、提供部門が主に追い求める数値の積となっており、各部門がそれぞれの立場からこの指標値を改善することが可能です。

お客さま総数が増えなかったとしても、開発・生産系の部門としては、商品やサービスの質を高めることを通じて価値基準クリア率を高めれば、指標値全体を改善させることが可能です。営業系の部門としては、お客さま総数を増やすことができれば、価値基準クリア率が一定だったとしても指標値全体を改善することが可能です。

ただし、誰でもいいからお客さま総数を増やそうとすると、自社の商品・サービスに価値を見出さないお客さまもが増えてしまう可能性があります。

たとえば、「英語は全く自信がないけれど、気分転換のために週一回英語に触れたい」というお客さまを、スパルタ式でTOEICの得点大幅アップを目指す英会話教室に入れてしまうような場合です。

価値基準が「TOEIC得点を730点以上にする」ということだったとすると、おそらくこのお客さまは価値基準クリアには至らないと考えられるため、戦略指標はまったく改善されないことになります。

となると、営業担当者にとっては、むやみに誰でもいいから客をつかまえることは得策ではなく、お客さまが求める価値をしっかりと見極めて、適切なお客さまにアプローチするということが必要になってきます。適切な戦略指標を設定することで、戦略に沿わない行動を極力制限する効果が生まれるわけです。

計測しやすいこと

たとえばTOEICの点数730点以上という価値基準であれば、お客さまからヒアリングすれば容易に計測可能でしょう。これ以外の場合でも、概ね計測のしやすさは確保されているのですが、これにつきましては、次項「価値基準の設定方法」と一体的にご説明いたします。

(3)価値基準の設定方法

では、価値基準はどのように設定すればよいでしょうか。前項でも触れましたが、実務で指標を活用するためには、指標値が計測しやすいものであることが必要です。試験の合格者数のようなものであれば、計測は比較的容易でしょうし、投資信託の場合ならまず100%計測できるはずです(計測できない、つまり、お客さまの損益を把握していないのならば計測以前の大問題です)。

しかし、すべての商品・サービスでお客さまが享受した価値を計測できるとは限りません。

そこで、価値基準を設定するにあたり、サービス提供側が「サービス利用者の属性」、「サービス利用者の価値享受状況」の二つを把握できているか否かによって、自社のサービスを分類し、それぞれの分類に応じた基準を設定すると効果的です。

「サービス利用者の属性」を把握できているとは、要するに「お客さまが誰だかわかっている」という意味です。BtoBの場合や、BtoCでも会員制であったり、お客さまがお名前を登録した上で利用するサービスの場合は、サービス利用者の属性が把握できていると考えられます。

一方、「サービス利用者の価値享受状況」を把握できているかは、例を挙げたほうがわかりやすいでしょう。たとえば、「長期的スパンでお客さまの大事な資産を増やします」という価値を提供するA投資信託サービスがあったとしたら、その価値をお客さまが享受したかどうかは、運用結果を見れば定量的に把握することができます。目標以上に運用益が出ているのであればお客さまはA投資信託が提供する価値を享受できていると考えられますし、損失が出てしまっているのであれば価値は享受できていないと言えるでしょう。

これに対して、「快適な滞在」という価値を提供するBホテルの場合、宿泊してくれたお客さまが価値を享受した(快適に滞在した)かどうかは、表情などからある程度推察することはできるかもしれませんが、定量的に把握することは難しいでしょう。

このように、「サービス利用者の属性」、「サービス利用者の価値享受状況」を把握できているかどうかでサービスを分類すると、次のように整理できます。利用者が誰だかわからないのに利用者の価値享受状況は把握できているということはありえないので、全3タイプとなります。

タイプ利用者属性
の把握
価値享受状況
の把握
サービスの例価値基準のタイプ
A:利用状況把握型資格学校、投資信託、ソーシャルゲーム、SaaSサービス実際の価値享受状況
B:利用者特定型ホテル、雑誌定期購読、旅行会社、会員カードのあるスーパー利用者アンケート(全数調査)結果で代用
C:利用者不特定型飲食店、駅の売店、スキー場利用者アンケート(サンプリング調査)結果で代用

タイプAは、利用者の属性、価値享受状況ともに把握できている場合です。たとえば、資格試験合格を支援する資格学校にとって、学生は当然把握していますし、何人の学生が資格を取得できたのかも比較的容易に把握できるでしょう。

上で例に挙げた、投資信託の場合もタイプAに分類されるでしょう。このタイプの場合は、実際の価値享受状況を価値基準として用いることができます。

タイプBは、利用者の属性はわかっているものの、利用者が価値を享受したかどうかは把握できないような商品・サービスが分類さます。こちらも例として上述した「快適な滞在」を約束するホテルの場合、価値享受状況自体ははっきりとわからないので、それをそのまま価値基準にすることは難しいでしょう。

 ユアスト 江村さん

ユアスト 江村さん

そこで全てのお客さまを対象に、価値を享受してもらえたかを問うアンケートをお願いすることによって、価値享受状況のかわりとすることが現実的だと考えられます。

タイプCでは、そもそも利用者が誰であるかすらわからず、利用者が価値を享受したかどうかも、直接的に把握する術がありません。このような場合は、全てのお客さまにアンケートをお願いすることは不可能ですので、サンプリング調査的に利用者アンケートを実施し、そこで価値の享受状況を調査することになります。

たとえば、「食材の新鮮さ」という価値を提供するレストランであれば、「新鮮さに対する満足度が80%」などを価値基準として設定することになるでしょう。なお、アンケートでは、提供する価値に関する項目(この例では新鮮さ)と、それ以外の項目(たとえば店の雰囲気)を混在させた質問形式にすることによって、戦略が機能しているかを確認するとよいでしょう。単に、全体の満足度だけを質問すると、何故満足しているのかわからなくなってしまいます。新鮮さをウリにしていたつもりなのに、実は低価格にひかれてお客さまが来ていたということもありえます。

タイプAのように「実際の価値享受状況」が把握できればもっとも信頼性の高いデータとなりますが、タイプBやCのように代用的な価値享受状況であっても何もないのと比較すれば雲泥の差です。
また、実際の価値享受状況が把握できるタイプAの場合でも、利用者アンケートを併用することによって、データの信頼性をより高めることができるでしょう。

業種別の価値基準の一例を、下表に示しますので、参考にしていただければ幸いです。

サービス提供例 価値基準の
タイプ・例
タイプ:業種 提供価値例 戦略例(強み) 属性把握 価値享受状況
把握
A:
投資信託
(うちを使えば)長期的にお客さまの資産が増えます 長期分散投資、システム化によるコスト削減 ◯:運用成績を把握 【実際の価値享受】
3年間で5%資産を増やす
A:
ピアノ教室
(うちで練習すれば)1年間でベートーベンが弾けるようになります 有名ピアニスト講師、楽しく続けられる雰囲気 ◯:上達レベルを講師が把握 【実際の価値享受】
1年以内に実技試験に合格
A:
コピー機販売
(うちのコピー機は)めったに故障しません 自動予防保全機能搭載 ◯:エラーによる停止時間、修理要請回数を把握 【実際の価値享受】
1年間の停止時間が1時間未満
B:
ビジネスホテル
(うちに泊まれば)快適に滞在できます 大浴場、高品質ベッドと枕、アロマ ✕:表情は快適そうだが内心はわからない 【全数アンケート】
宿泊の快適性に関する満足度90%
B:
定期購読雑誌
(うちの雑誌を読めば)業界での仕事を有利に進められます 国内外の充実した取材ネットワーク ✕:満足度はもとより、読んでいるかもわからない 【全数アンケート】
記事の専門性に関する満足度80%
C:
和風居酒屋
(うちの魚は)静岡の漁港から直送しているから新鮮でおいしいですよ 漁業者や農家との関係、高速インター近くの立地 ✕:おいしそうにはしてるが内心はわからない 【サンプリングアンケート】
食材の新鮮さに関する満足度80点以上

次回予告:対策まとめ

次回、S段階での対策のまとめとなります。

【対策まとめ】ステップ社の対策 | 「戦略実行4STEP」S(戦略策定)段階