「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の概要
なかなか機能しない人事評価制度
人事評価制度を導入されている会社は多いと思います。
しかし、たとえば、
・何を目標に設定すればよいのか悩む。(従業員)
・いろいろな目標を立てるので覚えきれない。期末の評価の時期になって、初めて自分の目標を再認識する。(従業員)
・自分はがんばったと思うのに評価されず、モチベーションが下がる。(従業員)
・従業員が納得できるように評価することはとても難しい。あまり高い点や低い点をつけると論理的な説明を求められるので、だいたい平均点近くにしておこう。(評価者)
などといった声が聞かれる会社も多いのではないでしょうか。
これらの声が積み重なり、人事評価制度は「忙しい中、手間ばかりかかって、何の意味があるのかわからない」とネガティブに捉えられてしまうことも少なくありません。
ならば人事評価制度は不要なのかというと、それもまた違うと当社は考えます。
がんばって結果を出しても、がんばらなくても、同じように評価される(たとえば、年功序列などで)のであれば、がんばる人は少ないでしょう。
やはり、一人ひとりの働き、会社(組織)への貢献に応じて評価し、処遇に差をつけることは、健全なことだと思います。
では、いったいどうしたらよいのでしょうか。

ユアスト 江村さん
その質問への当社なりの回答として、ここでは「中小企業向け シンプルな評価制度」をご紹介いたします。
「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の作り方
「中小企業向け シンプルな評価制度」の作成手順は、次のとおりです。
【会社全体の戦略指標】
「全国大会出場者数」: 昨年度8人 ⇒ 今年度10人
【部署ごとの先行指標】
(営業部門)「会員数」: 昨年度190人 ⇒ 今年度200人
(インストラクター部門)「ケガで2週間以上練習ができなかった子どもの割合」: 昨年度20% ⇒ 今年度15%
などといった形です。
後は、日常業務の中で、戦略指標・先行指標の値を改善させるための具体的なアクションを積み重ねていきます。
営業部門では、会員数を増やすために、チラシを配布したり、SNSで情報発信したり、体験イベントを開催するかもしれません。
インストラクター部門では、ケガをしにくいストレッチ方法を取り入れたり、ケガをしにくい身体をつくるための食事面のサポートを強化するかもしれません。
そして、ここで非常に重要なことは、戦略指標・先行指標の値を、全社員がいつでも見られるようにしておくことです。
社内システムのトップ画面などに表示させるのでも構いませんが、アナログな方法としてオフィスの壁に張り出すというのも、いつも目に触れるという点で、意外に効果的です。
また、たとえば毎週など、定期的に、部門内で進捗確認会議を実施することも極めて重要です。
進捗確認会議で確認・検討すべき内容は以下のとおりです。
- 戦略指標・先行指標の現在値を確認
- 直近の1週間で、指標値改善のために各自がどういうアクションをとったかの確認
- これからの1週間で、指標値改善のために各自がどういうアクションをとるかの確認
その上で、1週間業務を行い、各自が指標値改善のための行動をとり、翌週、再度進捗確認会議を行います。
先週の進捗確認会議で、「私は今週○○をやります」と言って約束しているので、多くの人は、約束を守るべく、日常業務に取り組むでしょう。

ユアスト 江村さん
もちろん、急に病気になってしまったとか、顧客側の都合が悪くなったなど、先週の約束が実行できないこともあるかもしれませんが、そのような場合は、その翌週に取り戻すなど、継続的に指標値の改善をはかり、目標を目指していくことになります。
「戦略指標」・「先行指標」の値をどれくらい改善したかで評価する
手順1・2で「戦略指標」と「先行指標」を設定し、手順3では、それぞれの目標値を目指して日常業務を行う際の留意点について考えました。
そして、戦略指標・先行指標をどれだけ改善させたかによって評価を行います。
たとえば、5段階で評価するケースとして、以下のような方法が考えられます。
戦略指標・先行指標の目標達成度合 | 評価 |
120%以上 | 5 |
100%以上120%未満 | 4 |
80%以上100%未満 | 3 |
60%以上80%未満 | 2 |
60%未満 | 1 |
何段階評価にするのか、目標達成度合がどれくらいであったら5と評価するのかなど、会社によって微調整は必要ですが、戦略指標・先行指標をどれだけ改善したかで評価するというのが基本的な構造です。
また、次表のとおり、チームメンバーの評価は、日々の行動の結果が直結しやすい先行指標の改善度合を重要視し、チームリーダーやさらに上の役職になると戦略指標の重要度が増すといった運用も有力です。
指標 | チームメンバー (一般職・主任) | チームリーダー (係長・課長) | 経営層 (部門長以上) |
先行指標 | 80% | 50% | ― |
戦略指標 | 20% | 50% | 100% |
一般的によく見られる人事評価制度は、評価項目の数が多く、評価される側も評価する側も大変です。
また、抽象的な項目も多く、評価結果に納得できないといったことも起こりがちです。
これに対して、「中小企業向け シンプルな人事評価制度」では、基本的に戦略指標・先行指標という2つで評価されます。
評価項目数はわずか2つであるとともに、数値で結果が出るため、評価結果に納得できないということも起こりにくいと言えます。
シンプルな制度ですので、人事の専門部署がない中小企業でも、あまり労力をかけずに制度を構築することが可能です。

ユアスト 江村さん
現状の人事評価制度がうまく機能していないなあという場合、「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の導入を検討されてはいかがでしょうか。
まとめ
- 「忙しい中、手間ばかりかかって、何の意味があるのかわからない」とネガティブに捉えられがちな人事評価制度だが、だからといって不要なわけではない。
- 「中小企業向け シンプルな評価制度」の作成手順は、次のとおり。
①売上ではない、会社の戦略として全社一丸となって追い求める「戦略指標」を探す
②会社全体の戦略指標値を改善するために各部門が貢献できる「先行指標」を探す
③「戦略指標」・「先行指標」の値を改善させるべく日常業務を行う
④「戦略指標」・「先行指標」の値をどれくらい改善したかで評価する