戦略ノート

your strategy, your life

人事評価制度の基本的な構造

「中小企業向け シンプルな人事評価制度」の作成手順は、次のとおりです。

  • 【手順1】売上ではない、会社の戦略として全社一丸となって追い求める「戦略指標」を探す
  • 【手順2】会社全体の戦略指標値を改善するために各部門が貢献できる「先行指標」を探す
  • 【手順3】「戦略指標」・「先行指標」の値を改善させるべく日常業務を行う
  • 【手順4】「戦略指標」・「先行指標」の値をどれくらい改善したかで評価する

ここまで手順1で戦略指標、手順2で先行指標を抽出し、手順3ではそれら指標値を改善させるべく日常業務を行うための具体的方法について見てきました。

いよいよ最後の手順4では、評価部分に踏み込みます。

ただし、評価部分にはさまざまな要素が含まれるため、ここではまず、戦略を実行するための人事評価制度の構造についてざっとご説明し、その後、各論について掘り下げていきたいと思います。

人事評価制度の主な目的 

ここでは、当社がおすすめする人事評価制度についてご説明していきますが、その前に、あらためて人事評価制度の目的について確認しておきたいと思います。

一般に、人事評価制度の目的としては、

  • 企業のビジョンや方針を示す
  • 社員の賃金や等級を決める
  • 社員の成長を促す
  • 社員のモチベーションを向上させる
  • 人材配置を最適化する

など、さまざまな要素があげられることが多いかと思います。

これらは間違いではないですが、あまりたくさん目的があると、かえってわかりにくくなってしまうので、当社はシンプルに下記のように考えています。

人事評価制度の主な目的:会社が示す方向に沿ってがんばり、成果を上げた人を評価し、報酬等で報いる

以下では、上記の目的を念頭に置いて話を進めたいと思います。

役割に応じた等級を決める

まずは評価制度の基礎、というよりも企業運営の基礎というべきかもしれませんが、企業内での役割に応じた等級を決めます。

等級は、役職とほぼ同じようなものと考えてよいでしょう。

等級の一例を以下に示します。

等級の数は、企業の業務内容や組織構造等によって変わってきますが、中小企業の場合、多くても5つあれば十分です。

小規模事業者であれば、以下のように2つでも、十分実用に耐えられるというケースは多いと思います。

各等級で賃金テーブルを作る

等級が決まったら、それぞれの等級で賃金テーブルを作ります。

各等級で最も賃金が低いレベルを1号とし、号(レベル)が上がるにつれて賃金もあがるようなテーブルとします。

また、当然ながら、同じ号であれば、高い等級の賃金のほうが、低い等級の賃金より高くなるようにします。

賃金テーブルの一例を以下に示します。(図では15号までしか掲載していませんが、実際には80号くらいまで作成することが多いです。)

等級・号を決めるルールを作る(評価結果と連動させる)

ここまでで等級と賃金テーブルができました。

この結果、すべてのスタッフは、どこかの等級のどこかの号に割り振られることになります。

一般的には、新入社員として会社に入ったら、まずはⅠ等級の1号に割り振られるケースが多いかと思います。その後、仕事をして成果を上げるにつれて、号があがって賃金も増えていきます。

その際、どのように号があがっていくのかを決めておく必要があります。

評価結果がよければ号のあがり方も大きく、評価結果が低ければ号のあがり方は小さいもしくは下がるというのが一般的です。

評価結果と号の変動の関係の一例を以下に示します。(ここではS・A・B・Cの4段階で評価が行われるケースを想定しています。)

このケースでは、Ⅰ等級(一般)の1号だった人がA評価を受けた場合、次の期には+3で4号に昇給する。Ⅰ等級(一般)の5号だった人がS評価を受けた場合、次の期には+5で10号に昇給することになるといった形で、ほぼ自動的に号の変動が決まってきます。

一方、等級のほうはどうでしょうか。

当社では、等級の変動(昇格・降格)については、単に評価結果のみだけではなく、総合的に判断することをおすすめしています。

特に昇格に関しては、

  • 上の等級の役割を果たす能力・意欲があるか
  • 上のポストに空きがあるか
  • 現在の等級で一定以上の号に達しているか

の判断基準をいずれもクリアした場合に、昇格させるのが妥当と考えています。

つまり、いくら能力や意欲があり、等級も高くなっていても、組織的にポストが空いていなければ、昇格させないという判断になります。多くの会社では、給与をあげる必要があるために、部下はいないけど部長にする(担当部長などという役職が充てられることも多い)といったことが散見されますが、当社のおすすめする制度ではそのようなことは起こりません。あくまで等級は役割によって決められるものと考えるからです。

以上が、戦略を実行するための人事評価制度の基本的な構造です。

しかし、実際に企業の現場で使える制度を作るためには、もう少し突っ込んだ検討が必要です。

そこで、これ以降の記事では、具体的な事例も交えながら、戦略を実行するための人事評価制度の作り方を詳しく見ていきます。

 ユアスト 江村さん

ユアスト 江村さん

人事評価制度はうまく設計できれば会社の戦略実行のための強力なツールになりますが、適切でない制度を導入してしまうと、かえって業績が悪化するということにもなりかねません。
ぜひ、よく考えて、使える人事評価制度を作っていきましょう。

まとめ

  • 人事評価制度の主な目的は「会社が示す戦略に沿ってがんばり、成果をあげた人を評価し、報酬等で報いる」こと。
  • 役割に応じた等級を設定する。中小企業の場合、等級は2~5個程度が妥当。
  • 各等級内で号(レベル)と基本給の対応表(テーブル)を作る。号が上がれば基本給も上がる。
  • 評価結果と昇給のルールを作る。一例として、評価結果がSであれば+5、Aなら+3、Bなら+2、Cなら+1 など。厳しく運用するなら、低評価の場合、マイナス昇給とすることも考えられる。
  • 昇格のルールを作る。当社がおすすめする着眼点は以下のとおり。
    ①上の等級の役割を果たす能力・意欲があるか
    ②上のポストに空きがあるか
    ③現在の等級で一定以上の号に達しているか