誰もがすぐに確認できるスコアボードを設置しよう
前項では、戦略指標、先行指標を設定しただけでは不十分で、指標値改善を進めるためには、「進捗確認会議」が重要ということをお伝えしました。
進捗確認会議の議題は以下になります。
- 戦略指標値、先行指標値の確認
- 前の週に、先行指標値を改善するためにやると約束した活動の進捗状況報告
- 先行指標値を改善するために今週やることの約束
さて、上記の進捗確認会議を実施するためには、指標値(戦略指標値、先行指標値)を確認する必要があります。確認するだけでしょと思われるかもしれませんが、指標値をうまく確認できるようにしておくためには工夫が必要です。
ここでは、指標値の確認方法について考えてみます。
目次
指標値を表示するスコアボードの導入
私はサッカーが好きなのですが、スタジアムに行けば、必ずスコアボードがあり、対戦している両チーム名、得点、試合時間などが表示されています。
これは、サッカーに限らず、ほとんどのスポーツで同様ですね。
仮にスコアボードがなかったとしたら、どちらのチームが勝っているのか、残り時間はどれくらいなのかといったことがわからなくなり、観客の多くは興味を失って、スマホをいじりだしたりするように思います。
選手も、残り時間10分で1点負けていることを知っているからこそ必死になって攻撃をしますし、1点勝っていることを知っているからこそ「失点に気を付けながらあわよくばカウンター(逆襲)でもう1点とって試合を決めよう」などと考えられるわけです。
一方、ビジネスの世界ではどうでしょうか。
自分たちのゴールはどこにあって、現状、自分たちはどれくらいの位置にいるのか、残り時間はどれくらいあるのかといったことを認識し、行動につなげるためには、スコアボードが必要だと思います。
しかし、どれくらいの職場でスコアボードが設置されているでしょうか。
目の前の仕事に追われていて目標を見失っていたり、いつの間にか試合が終了していた(期がかわっていた)といった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
自分たちの目標を達成したいのであれば、ビジネスにおいても、スポーツ同様、スコアボードは必須だと思います。
そして、スコアボードに表示される情報のうち、スポーツにおける得点にあたる最も重要なものは、戦略指標値・先行指標値です。
ぜひ、皆さんの職場に、スコアボードを導入していただきたいと思います。
スコアボードに求められること
サッカースタジアムのように、見やすいところに、戦略指標値・先行指標値が表示されるスコアボードがあれば、進捗確認会議は進めやすくなります。
スコアボードには、次のような性質が求められます。
- スタッフがすぐに確認できること
- 自分たちが勝っているのか負けているのかわかること
- 定期的に更新されること
それぞれの条件について、若干補足します。
スタッフがすぐに確認できること
ある職場における進捗確認会議の例です。
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リーダー:はい、みなさん、月曜10時ですので、これから進捗確認会議を始めます。皆さん忙しい時期だと思いますので、20分で終わらせたいと思います。まずは、戦略指標値・先行指標値の確認ですね。Aさん、戦略指標値・先行指標値のデータはどのファイルに入っていましたっけ?
Aさん:えっと、確か、売上管理表と同じフォルダの指標値集計ファイルでしたよね。ちょっと確認してみます。あ、売上管理表フォルダのサブフォルダの中にありました。あれっ? 似たようなファイルがたくさんありますね・・・
Bさん:あ、すみません! 先週の金曜日の朝、先行指標値を入力しようとしたときにファイルが読み取り専用になっていたので、別ファイルで保存したんです。
Cさん:え、そうなんですか? 私は金曜日の夕方に、元々のファイルのほうに入力しましたよ。
Bさん:えっ!?
リーダー:じゃあ、別々のファイルを更新しちゃったってこと?
Aさん:あれっ!? すみません、パソコンがフリーズしてしまったようです・・・・
ちょっと再起動しますね。
・・・・
はい、再起動しました。
元のファイルがこれだから、Cさんのデータは反映されているけれど、Bさんのデータが入ってないのですね。では、Bさんが入れてくれたデータを、元のファイルにコピーしてっと・・・・
Dさん:すみません、もう10時13分です。10時20分から外出しなくちゃならないので、今週の会議はリスケしませんか?
リーダー:いや、進捗確認会議は毎週月曜朝と決まっているからなあ・・・・
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これは、極端な例かもしれませんが、指標値を確認するのに意外に時間がかかることもあり得ます。
進捗確認会議は20~30分で簡潔に行うことが望ましいので、指標値確認に時間をかけている暇はありません。
また、スタッフは、日々の仕事の中で、戦略指標値・先行指標値を改善するべくがんばることになります。
これらを踏まえると、戦略指標値・先行指標値が表示されたスコアボードは、誰もがいつでもすぐに確認できることが必要です。
「すぐに」というのは、具体的に言うと、例えば「10秒以内に」といったレベルです。
サッカースタジアムのスコアボードも、トイレに行っているとかでない限り、10秒以内に確認できると思います。
自分たちが勝っているのか負けているのかわかること
戦略指標値・先行指標値は、いわば自分たちのチームの得点状況です。
これがわかることが大事ですが、それだけでは不十分です。
サッカーでは、5点とったから大喜びしていいとは限りません。もちろん、相手が6点とっていたら負けです(サッカーのスコアで5対6は、ホームアンドアウエーの二試合合計くらいでしか見ませんが)。
つまり相手の得点状況も把握する必要があります。
ビジネスにおいては、特定の敵と戦うということは少なく、通常は、目標を達成すれば勝ち、達成できなければある意味負けと考えるのが自然でしょう。
そのため、スコアボードでは、自分たちの得点状況に加えて、目標値も表示しておく必要があるでしょう。
前述の「スタッフがすぐに確認できること」という条件とも関連しますが、飛行機の操縦室にあるコックピットや、「ダッシュボード」といわれる経営者向けのビジネス管理ツールなどのように、たくさんの計器や情報がありすぎるのも問題です。
情報が多すぎると、スコアボードのどこを見れば、自分たちが勝っているのか、わかりにくくなってしまいます。
このため、スコアボードに掲示する情報は必要最低限に絞って、シンプルなものにすることが大切です。
定期的に更新されること
戦略指標値は、全社一丸となって追い求める数値ですので、誰かが責任をもってモニタリングしている場合が多いですが、先行指標値は現場のスタッフの行動と密接に関係するため、スタッフ一人ひとりが自分の行動をデータとして入力するケースが多くなります。
その際、各自が的確に更新できるような設計であることも大切になってきます。
スコアボードの作り方
掲示場所を決める
スタッフが10秒以内程度の素早さでスコアボードを見て、戦略指標値・先行指標値を確認できるようにするにはどうすればよいでしょうか。
アナログかつ古典的ではありますが、事務所の壁に大きな文字で描いたスコアボードを張り出すというのが一案です。
売上に関しては、手書きの大きなグラフを壁に張り出しているという会社は、少なからずあると思います。
それと同じように、戦略指標値・先行指標値の推移がわかるグラフを張り出して、適宜、値を入力(折れ線グラフを引くなど)していく方法です。
一方、全スタッフが日常的にパソコンを使うような職場の場合、誰もがよく見る社内のポータルサイトにスコアボードを掲示したり、特定のファイルなどをスコアボードにする方法が考えられます。
グラフや表をデザインする
戦略指標値・先行指標値は業務の進行に伴って変化するものですから、相性がよいのは折れ線グラフです。
折れ線グラフでは表現しにくいような場合は、他のタイプのグラフや表形式とすることも考えられます。
また、現況の指標値と目標値を比較して、勝っているのか負けているのか判別できることが必要です。このためには、折れ線グラフの中に目標値の線を追加したり、「青は順調、黄色は要注意、赤は危険水域」といったように信号機のようなデザインを用いる方法などが考えられます。
更新ルールの決定
戦略指標値・先行指標値ともに、毎週の進捗確認会議が始まる時点までには、最新のデータに更新されている必要があります。 誰が、いつ、どのようにデータを更新するのかについて、ルールをきちんと作成し、それを遵守することがとても重要になります。
スコアボードの例
以前にも例でとりあげた体操教室のスコアボードを見てみましょう。
この体操教室の戦略指標は「全国大会出場者数」、インストラクター部門の先行指標は「ケガで2週間以上練習ができなかった子どもの割合」でした。
戦略指標値に関するスコアボードは以下のとおりです。
横軸に1年間の時間(週単位)をとり、縦軸に戦略指標である全国大会出場者数をとっています。
全国大会は年3回開催されるということで、今年の1回目の大会(3月)で4人、2回目の大会(7月)で3人が出場し、累計7人となったという例です。
目標値は年間8人に設定していたため、3回目の大会に一人でも出場できれば目標をクリアすることになります。
グラフには、目標ライン(ここでは単純に目標値を週の数で均等に案分した直線で表現しています)が記載されています。また、情報は目標ラインと実績値のみであり、非常にシンプルな構成です。
そのため、自分たちが試合(対戦相手は「目標」)に勝っているのか、負けているのか、そして最終的に勝てそうなのかが一目でわかるようになっています。 戦略指標値は、社長室が管理しており、毎週月曜の朝一番で更新しているとのことです。
また、先行指標値に関するスコアボードは以下のとおりです。
こちらは、表形式のもので、各会員が当該週にケガなく練習することができたかをまとめています。
インストラクターが、担当する会員について○×を入力すると、先行指標である「ケガで2週間以上練習ができなかった子どもの割合」が自動的に計算されるようになっています。
各インストラクターは、日曜日の夜までに〇×を入力しておくルールとなっているそうです。
この体操教室では、戦略指標値、先行指標値のスコアボードを表計算アプリケーションで作成しており、全社員がアクセスできる共有フォルダに保存しています。
これらのスコアボードを確認しながら、進捗確認会議を行い、指標値を改善するために今週自分たちは何をすべきかを考えて、日々の業務を回しています。
ユアスト 江村さん
たかがスコアボードと思われるかもしれませんが、すぐにスコアボードを確認できないような職場では、戦略指標・先行指標の値を改善することは難しいでしょう。
ぜひ、シンプルなスコアボードを設置して、戦略指標・先行指標の値をモニタリングしてみてください。
まとめ
- ビジネスにおいても、スポーツ同様、スコアボードは必須。スポーツにおける得点にあたる最も重要なものは、戦略指標値・先行指標値である。
- スコアボードの条件は以下のとおり。
①スタッフがすぐに(10秒以内が目安)確認できること
②自分たちが勝っているのか負けているのかわかること
③定期的に更新されること - 戦略指標値・先行指標値は業務の進行に伴って変化するので、折れ線グラフで表現しやすい。